氏いわく、肉を断ったのです、と。それ以外は何もしなかった。好きな牛肉を断つ、ステーキはむろん焼肉定食の類も決して食べない、これを2年間つづけた。それ以外は何もしない、減食したわけでもなく、これまで同様、お腹いっぱい、食べていた。豚肉や鶏肉も断った。要は、続けるか否か、それも徹底するかどうか、それだけだと笑った。

 二者択一、という言葉がある。ふだん何気なく使っているそれには、実は深い意味があるようだ。人は一つの岐路をみたとき、右へ行くか左へ行くかを決めなければ先へは進めない。どっちを選ぶか、事が重大であればあるほど、その選択には決意がいる。先だって、煙草をやめた知人がいて、どうしてやめられたのですか、と尋ねると、答えは簡単、吸うか吸わないか、どちらかを選ぶしかないことに気がついて、結局、吸わない、を選んだにすぎない、というので、ウ~ンと妙に感心したものだ。
       
gourmet4-3
街角で無造作に売られるバナナ


 大好きな肉を断つなどもってのほか、そんなことをするくらいなら死んだほうがマシ、ぶくぶく膨れたって、旨いものを食べて死ぬほうがいい、と思う人がいれば、死ぬのはいや、もう少し生きたい、と思う人もいるだろう。

 で、我がどっちを選んだかといえば、「肉断ち」だった。きっと、つらい思いをするだろう、と思っていた。続けられずに断念し、元の木阿弥になる可能性も予想した。が、これが大丈夫、意外にあっさりと、肉の旨さと別れることができたのだ。これはなぜか、どうしてか?

 このギモンのほうが、我には興味があった。以来、その理由をしばしば考えるようになった。牛肉、ステーキに未練がないのは、なぜだ?
2009.06.01 / Top↑
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2009.06.05 / Top↑
 結論からいえば、それは「洗脳された味覚」だったからだ。マインドコントロールされた旨さ、と言い換えてもいい。

 話は少し戻るけれど、戦後の日本社会は、欧米一辺倒の様相を呈し、その価値観に染まり、肉食文化もまた取り入れていく。牛肉を食べる、食べられることが経済的豊かさのバロメーターとなり、同時に、それは旨いもの、との観念もまた植え付けられていく。確かに、旨いといわれれば旨いものにちがいなく、何の抵抗もなく肉食を美食とすることが世の流行となっていった。

 しかしながら、それは我々にとって、日本人にとって、本当に旨いものなのかどうか。日本人の身体、民族としての肉体にとって、それは真に適したものなのかどうか。このことに、苦もなく肉を断てた我は、ギモンを感じはじめたのである。
    
gourmet5-1
オレンジ&タマゴ売り


 戦後社会が欧米の色に染まり、矛盾を抱えていったように、肉食文化そのものが日本人の本来の性格、体質までも変えていったのだという気がしてならない。これまた文化受容国家の一側面。質よりも旨さを喧伝され、確かに旨いと感じる味覚に飛びついていった国民は、旨い代わりに中身はいかなるものかとということには目をつぶってきた。いや、目をつぶるように仕向けられてきたといったほうが正しいか。

 中身より見てくれ、体裁をかまい、ホンモノが見えずニセモノにだまされる国民が多数を占めるようになったのは、戦後教育、マスメディアのあり方、政治と宗教にも関わる問題であるわけだけれども、それは国民のせいだけではない。

 肉を旨いと思って食べさせるのも、それを加工した食品を売り込むのも、それによって利する者の戦略であり、米国の言いなりになった戦後日本の、やむを得ぬ成り行きだった。それは今現在の農薬や化学肥料や食品添加物にまみれた食糧事情とも関連して、深刻な話になってくるのだが、それはさておく。
2009.06.05 / Top↑
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2009.06.06 / Top↑
 ともあれ、肉断ちをした我の身体は、当然のようにジリジリと体重が減りはじめた。それは実に少しずつであり、最初のうちは、増えていないことがわかる程度だった。が、半年ほど経つと、1キロばかり、一年経つと、1.5キロ、二年が経つと、3キロ、といったふうに落ちていった。
 二年間でたった3キロとは話が違うじゃないか、と思われるかもしれない。

gourmet5-2
筆者のアパートに来る野菜&果物売り


 これはなぜかというと、個人差もあるだろうが、我は肉断ちを徹底しなかった。正直いって、できなかったのだ。つまり、牛肉は断てたが豚肉は断ちきれなかった、という事情がある。

 ビーフステーキは断てたのだが、トン足やら豚ドンの類は、実は前々から牛に劣らず好きであったから、ついつい、週に一度はいいか、ということになった。たまには鶏肉も、焼き鳥というものの誘惑に勝てなかった次第なのだ。むろん、極力、控えてはいたが、我の場合は、ビールが加わる。これを断つくらいなら死んだほうがマシ、という好物であるから、まあ、全体としては肉の「半断ち」であり、3キロでも上出来といわねばならなかった。

 そして、これは言い忘れるわけにいかないのだが、体重の減りはたいしたことがない代わり、健康面は明らかに上昇した。日々の食事は米、ソバ、パン、うどん(これはカロリーが高い)、野菜、惣菜、納豆、タマゴ、白菜等のお新香、キムチ、といったところで、あとは魚貝類ほか海の生きもので、これも肉といえばいえるわけだけれど、脂ぎった大トロのようなもの以外はよしとしたい。

 前よりも元気そうだと、人からもいわれた。顔の色艶がよくなった、と。肉を食べないと、なぜ胃の調子がよく、疲労感も前ほどではないのか。
2009.06.06 / Top↑
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2009.06.07 / Top↑
 これはおそらく、肉の代わりをしたものが身体にはだんぜんよかったせいだろう。肉で酸性化しがちだった身体が、アルカリ性の食品によって中和されたせいかと思われる。つまりは血液の問題(ほとんどの病気がこの問題)で、以前はドロドロであったのが改善されて、サラサラ度が増したせいにちがいない。職業病である腰痛までも軽減したことは、体重が落ちたせいだけではない。
      
gourmet5-3
ナマズの炭火焼き


 このままでは数年以内に死ぬ、と感じていた我は、そうして何とか持ちこたえる。そして、これまた不思議なことに、あれほど旨いと感じていたビーフステーキには、未練がないどころか、見たくもない、食べたらきっと反吐が出る、とまで感じるようになったのだ。(実際、最近になって、同席者が注文したサイコロ・ステーキなるもの<サイコロのように小ぶりに切ってある>をつい口にしてしまったのだが、胸がもたれて嘔吐を感じ、一日中調子がわるかった。)

 いま、「不思議なことに」と書いた。が、実は、不思議なことでもなんでもない、当然の結論であることに、さらに歳月を経て実感することになる。本来の我に、日本人らしい我に戻っただけである、と。戦後社会の洗脳から解放されて、欧米の肉食人種(肉を腐らせないための香辛料がほしくて東南アジアを我がものとした)の占領政策の後遺症から解放されて、真の我、草食人種としての誠の日本人に立ち返っただけである、と。
2009.06.07 / Top↑
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2009.06.08 / Top↑
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2009.06.09 / Top↑
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2009.06.11 / Top↑
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2009.06.11 / Top↑
 もとより、わが国は農業立国であり、江戸時代には鎖国しても食糧を自給できたことはもちろんのこと(飢饉というものはあったが)、農民は武士の次の位におかれて大事な存在であった。四季折々の自然と、海のもの、山川のものに恵まれて、本来は異国から食糧を運んでもらわなくても充分にやっていける国であった。

 そして、その主なる食べ物といえば、どこまでも自然のもの、あくまで天然のもの(むろん農薬も化学肥料も使わない)であり、精進料理に代表されるところの、量より中身、旨さよりも質、贅沢より質素を重んじる、いわば日本人としての思想(仏教や儒教等)とか、本来の食に対する姿勢が料理にもこめられていた。そこに、牛肉などは介在する余地もなく、牛もまた秣(まぐさ)を食べて生きる草食動物として、田畑を耕すために居るだけだった。

 それを食べるなどということは、一方で牛をつかって農業をやっていた父親にしても、学校からの帰路に肉屋ができるまでは、考えもしなかったはずである。

gourmet6-1
天日干しされる鶏肉


 つまり、我々の身体を構成する細胞組織、先祖からのDNAというものは、肉食をメインとすることに適さない、それを食するとすれば、タンパク源としての鶏や豚や魚があれば充分であった。(特に豚は、原始社会においても重要なタンパク源であって、家族同然の扱いをするニューギニア高地人のような民族もいて、我の訪ねた村では老女が豚と添い寝していた。)

 あとは、野山にある植物、田畑にできる米と野菜、果物を食することで、充分に命をつないできたのであって、我々の身体はそうして祖先から受け継いできた、独自の遺伝子で出来ているのだ。つよい肉体も従って、その伝統を守ることによって可能となるのであって、実際、戦後生まれの日本人が食文化の断絶、変化によって、そしてまた化学物質で汚染された食糧によって、弱体化していったことは方々で言及されているが、確かな事実だ。
2009.06.12 / Top↑
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2009.06.13 / Top↑
 卑近な例でいえば、我が故郷の村では秋祭りに大きな山車(たいこ)が出るのだが、昔は村の若衆が車などつけずに村中を担いで練り歩いたという。近年は車をつけて、宮入りのときだけ外して担ぐのだが、それでも落としてしまうことがあって、今の若衆は弱くなった、と父親は話したことがある。

 ここで大急ぎで断っておかねばならないのは、肉食がとりわけ人間の身体にわるいなどといっているのではないことだ。確かに、肉食より草食を主としたほうがつよい子供に育つことは、実験で証明ずみであるそうだが、ただ、例えば糖尿病を抱えた患者に対しては、肉類はどんどん摂ってかまわない、大敵は炭水化物であって、それを一切食べない療法を行なって成果を上げている医者もいる。

 従って、我の場合は、いわば美食断ち、カロリー減の一手段として肉を控え、それに馴染んだ理由について持論を述べたのであって、これを念押ししておかないと、肉を扱う業者に叱られる。

gourmet6-2
炭火焼きされる魚


 要は、自分の目的に適ったメニューを選択すればいいのであって、例えばご飯(米)を食べないと力が出ない、どうしても身体が要求する、という人は炭水化物がどうこうという問題ではないだろう。いずれにしても、食というものは習慣化するもので、それもいったんこうと決めると、相当にガンコなもののようである。

 いったん身体が馴れたもの(あるいは洗脳されたもの)からサヨナラするには、それ相当のきっかけ、理由がなければならないのは、死ぬまで牛肉が好きだった父親と、それを断った我の例が示すとおり、いや、ベジタリアンがさらによい例だが、これは後述としよう。
2009.06.13 / Top↑
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2009.06.14 / Top↑