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ブロマガって何?
2010.06.01 / Top↑
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ブロマガって何?
2010.06.02 / Top↑
 十年修業と聞いて、えッ、と絶句した人がいるはずである。そんなにかかるはずがない、と。むろん秀でた才のある人は別で、我のような凡才についていっているのだが、まずまずの文章を書きたいなら、つまり、人に読ませて恥ずかしくないものを書こうと思うなら、十年は覚悟しないといけない。

 まずは十年、とりあえず十年である。(これは後のエピソードにつながることなので憶えておいてほしい。)
 それはさておき、恩師、暉峻康隆が主査であった卒論『ユーラシア紀行』の一件に戻そう。

 書き上げるのに苦労した話はすでにしたが、実際、みずからの体験を表現することの難しさに、一時は投げ出したくもなった。どんなにおもしろい、特異な体験をしたところで、それをいかに書くかはまったく別の問題としてある。(まして、紀行ではなく小説となると、さらに別であることにもまだ気づけていない。)

 だが、とにかく仕上げねばならなかった。やり遂げなければ、何のために休学までして海外へ出たのか、わからなくなる。モノ書きになろうという決心も、そこであえなく挫折する。旅に出る前の、あれもこれもダメだったことと同列の、ただの夢で終わる。

 それは避けたい思いがなぜかつよくあった。これもダメなら、どこまでいっても、何をやっても同じ徒労だという危機感のようなものだったか。
2010.06.02 / Top↑
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ブロマガって何?
2010.06.03 / Top↑
 ここで、その中身の一部を記してみよう。四百字詰め原稿用紙、百四枚。それを二つ折にして綴じると、総ページ数は二百八となる。「シベリアの灯」「ある老人と」「マンジェとマンジュ」「モロッコ体験」「野宿の思い出―パリの空の下で―」「果てしなき放浪―あるアメリカ青年のこと―」「異国に倒れて―ドイツのある医者に―」「滞インド記―印パ戦争のさなかで―」

 齢二十四になって間もない晩秋のころの筆である。

「シベリアの夕暮。雪がやんで空が晴れ、澄みきった大空に星が一つ二つ輝きはじめた。時計をみるとすでに八時をすぎていた。窓景色の輪郭はぼんやりと灰白色に薄れ、あたりが暗くなるにつれて星の数が増していった。純白の雪におおわれた黄昏時の平原にほんの時たま点在する街灯や人家にも火がともり、徐々にその光の度合を強めていった。」
2010.06.03 / Top↑
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2010.06.04 / Top↑
 さすが若輩、すばらしく稚拙な文章で、冷汗は出ないが、ため息はいくつかこぼれざるを得ない。これをいま添削すると、原稿用紙が真っ赤に染まる、というより、手がつけられないほどのものだ。

 よくぞこんなものに、先生は「優」なる評価をくださったものだと、これもいまならわかるが、当時はむろんわからなかった。単純に喜んで、しかも愚かな問いかけを先生に向けて発している。忘れもしない、卒業間近のある日、先生に連れて行かれた新宿の酒場<利佳>(作家、編集者などの行く酒場として有名だった)で、「あの旅行記は売りものになるでしょうか」と、尋ねているのだ。

 つい一年前までは、アイウエオしか書けなかった男が、いきなり売りものが書けるという奇跡など起こるはずがない、にもかかわらず、である。
2010.06.04 / Top↑
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2010.06.05 / Top↑
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2010.06.06 / Top↑
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2010.06.07 / Top↑
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2010.06.08 / Top↑
 その愚問に対して、わが師は何とお応えになったか。これも忘れない。「そうだなぁ、あれに女が書けていればな」、そう返された。その一言があまりにさりげなかったものだから、我はすっかり信じ込んで、「そうか、あれに女さえ書けていれば売りものになるのか」と思ったものだ。

 そういえば、「女」について(これはつまり恋とか愛のからみを要する話)はどこにも書いていない。旅の途上、出会った女性は幾人か存在するが、なぜ書かなかったのかを深く考えることもなかった。

 それもいまならわかる。要するに、女を書くのはむずかしく、当時の我には手に負えなかった、ために、放置しただけのこと。それだけの話であることにも当時は気づけなかったのだから、いかに文章修業一年生であったかがわかろうというもの。
2010.06.09 / Top↑
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2010.06.09 / Top↑
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2010.06.10 / Top↑
 女性については一ヶ所だけ、「マンジェとマンジュ」(「食べる」というフランス語の意味を「饅頭」から思い出し、ふたりの女性に家庭料理を御馳走になったという他愛のない話)に記しているが、また少し恥をさらしてみよう。

「私が座っていたテーブルに、突然二人の女性が同席したのは、コーラを飲みながらこれからどこへ行こうかと考えていた矢先だった。二人はドイツ語で喋りはじめたので、こちらにはさっぱり話の内容はわからない。見た感じで判断すると、姉妹ではなく友達らしい。年ははたち前後、二人ともすらりと背が伸びて、一方は白いワンピースに赤いネクタイ、他方は明かるいチェックのツーピース、それぞれよく似合う上品できれいなお嬢さんである。」
2010.06.10 / Top↑
 まるで小学生の文章である。小学生なのに、「ぼく」ではなく「私」とは何と生意気な。これから大学を卒業するというのに、こんな文章しか書けないのは恥ずかしいかぎり。先生に<利佳>へ連れていってもらえるような分際ではない。

 にもかかわらず、女が書けていれば売りものになると信じ、よろこんだ。何とも単純な二十四歳であったのだが、実は、それが暉峻先生流の「励まし」であったことに、後日(といっても七年後に)気づくことになる。

 それはさて措き――、その利佳の夜、先生はこんな話をしてくださった。
2010.06.11 / Top↑
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2010.06.12 / Top↑
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2010.06.13 / Top↑
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2010.06.14 / Top↑

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